堀安右衞門「能面打ち下」掲載の石王尉
豊中能面工芸会 主宰:鳥畑英之先生 粗彫りから彩色手順を公開

伝福来作写し 
堀安右衞門作 
室町時代 
重要美術品

[50880]
能面打ち
「堀安右衞門の作品と技」下巻

石王尉を掲載

彫り工程

彩色工程

彫り工程


型紙

石王尉型紙 計22枚・1セット


木取り

1)檜材に中心線を引き平面の
型紙より輪郭を表面から写し取ります

檜材 寸法
タテ240×柾170×厚さ90㎜

面寸法
タテ205×柾153×厚さ83㎜

2)
輪郭線に沿って上下を鋸にて切り取ります

3)
下部の切断面に型紙6及び3,4番を写し取ります

注)表面・裏面を間違わない様に6番の鼻頭を
表側の面に詰めて写します

檜材の厚さは90㎜に対して
面の厚さは83㎜なのでその差7㎜の余裕があり
削りそこなった場合
全体を落とす事が出来ます

4)
各コーナー及び輪郭線以外の不要な部分をヨキ・鋸等で切り取ります

5)
面中心の縦型紙にて低い位置
二か所に深さ1㎝程の切り込みを入れる


粗取り

6)
粗彫り準備
作業台、主な型紙、木槌、
平型及び丸型のたたきのみを用意

7)
平型たたきのみで鼻の頭方向から額の切り込みまで
彫りこみます

8)
上口部から鼻下の切り込みまで彫り込みます

9)
額の不要部分を削り取ります
この時、面中心の縦型紙で削り取ります
注)深さを見極めておいて下さい

10)
上口、顎部分を少しづつ削ります

11)
6番の型紙で鼻幅下書きします

12)
鼻の左右を削り取っていきます

13)
鼻の両脇から顎部分を削り取ります

14)
頭、額部分を削り取っていきます

15)
裏に型紙を、押しピンで止め
輪郭を直角に仕上げます

16)
型紙3番、4番で
この眉間、及び目頭
目尻等を下書きします

17)
丸型たたきのみで目部分を削り
形状をつけていきます

18)
型紙で確認をしながら頭、頬、顎を

すこしづつ削り取っていきます


仕上げ(こなし)

19)
たたきのみから彫刻刀に変えて
各部分の仕上げに入る

20)
面中心縦型紙にて、こまめに1番から顎まで
型紙にて形状確認を行う

22)
型紙のない部分等は滑らかに又、表情に注意しながら
彫り進みます

23)
型紙で何度も、目頭、目尻、口角等
位置(寸法)を型紙にて確認

24)
口の中心に鋸の切り溝をいれて彫進める
口角に注意

25)
鼻、目穴を5㎜程度の
深さまで彫ります


裏取り

26)
たたきのみ丸型で一定の深さで彫すすめます
材料の木目に注意

27)
裏を彫刻刀跡の彫模様を考えて仕上げていきます

28)
目穴・鼻穴を仕上げます

29)
#120番のぺーパーで軽くならします

30)
彫りの完成です

彩色


ヤニ抜き


1)
ビニール袋に面が浸かる程度までエタノール(燃料用アルコール)入れ封印
4日から5日間保管 注)可燃性が高いため保管場所を厳重に管理してください

2)
鍋に面を入れ沸騰した熱湯を入れます、その温度差にによって
ヤニを含んだアルコールが細かい泡になって吹き出てきます
2~3回熱湯を入替 ガスコンロで炊き出し 泡が出なくなったところで
取り出し、日陰干しで乾燥(2~3時間)させます

乾燥の目安として、ヤニ抜き前に重さを計測しておき、同じ重さになるまで
乾燥すれば良いです


漆塗り

用具
ポリサイト(油性合成うるし塗料)
透・黒(チューブ入りに変更)
うすめ液・小皿・うるし刷毛・
参考:まこも(艶消し用に使用)

1)
ポリサイトを適量のうすめ液で塗りやすい柔らかさに混ぜます
参考:透明漆と黒漆を混ぜてお好みの
色にもできます

2)
裏面に2~3回塗り重ねます
表面の耳穴周辺、骨格の出っ張った
部分にも少し塗って置きますと時代の
入ったおもしろい彩色が出来ます
参考:漆が乾かないうちにマコモ等をかるく刷り込みますと艶消しが出来ます


下塗り

用具
下塗り胡粉(盛り上げ胡粉)
三千本膠・膠鍋・乳鉢・乳棒
とおし(#150)
メスシリンダー(200㎜・20㎜)
電熱器・刷毛(平筆・たたき筆)

1)
膠溶液
三千本膠5g:水100㎖(約4面分
を電熱器で溶かして作り、布等でろ過しながらメスシリンダーへ移します

2)
盛り上げ胡粉(大匙大盛2杯分)14g
膠溶液20㎖を乳鉢に入れ乳棒にて
良く混ぜ合わとうし#150で濾し
重皿に移します

3)
残った膠溶液5㎖で乳鉢の中の胡粉を洗い、とおし#150で濾して
別の重皿に移します

4)
顔全体に洗い落とした膠溶液5㎖を
たたき筆でよく刷り込むように
塗りこんでいきます

5)
良く乾かせた後
平筆で複数回乾燥を含めて塗重ねていきます
鼻穴・目等は小筆で丹念に塗ります

6)
良く乾燥させて後、ペーパー#120番で軽くならします


上塗り

上塗り、彩色用具
膠溶液・上塗り胡粉・ケーキカラー(現在は面打ち顔彩)
六色墨・黒墨・朱墨・面双硯・水乾板流し顔料13色セット
天然煤液・螺青・竹べら・青墨・平筆・面相筆・小皿等

1)
顔料(朱土・黄土・青(17番)・螺青を適量に混ぜ合わせ

上塗り胡粉(大匙大盛1杯分)を加え良く擦り合わせ拡販します

注)上塗り色を考えて顔料を調合してください
特に青(17番)は非常に効き易く微量で調合してください

2)
上塗り溶液15㎖
膠液を7.5㎖とぬるま湯7.5㎖で倍にうすめたものを作ります

下塗りを同じようによく混ぜ合わせた
上塗り胡粉(大匙1杯分)4gに約15㎖を注いで撹拌して
とおし(#150)にかけ重皿に移します

3)
出来上がった上塗り溶液を液溜り等に注意して丁寧に塗り重ねていきます

一回ごとによく乾燥させてください


彩色

4)
小皿に白色(面打ち顔彩8色セット)を水で溶き
黒色を少量ずつ混ぜ合わせ鼠色(グレー色)を作ります

4-1)
別の小皿に黄色・赤色・青色を適量水で溶き、若草色を作ります
濃淡のある若草色を2~3皿作っておきます、又赤色、青色に作り置きの鼠色を混ぜたものを1皿づつ作り、都度4色を調合して色合わせを行います

5)
使い古した綿布(約5㎝角)を調合した液に浸し
良く絞って(又はタンポン)丹念に面の輪郭線
より打ち込んでいきます
この時、少し乾かせた色合いを見て
思った色に調合し直したりもします

6)
適当に色が付き始めたころ合いを見て
表面を湿らせて竹べら等で時代を入れる為
軽く傷を付けたりもします

7)
面相筆で目に黒墨の罫書を入れます
又、朱墨を研いで唇に朱を入れます

8)
鮮やかな朱の色の上に少し古色(天然煤液)を入れ
時代感を出します

9)
調合した色に古色(天然煤液)を混ぜ
段々と古びの色に変えていきます

10)
骨格の高いところ等に湿り気を与え
竹べら等で傷を付け時代を入れていきます

11)
眉毛、口髭を薄めの墨で罫書をします

12)
調合した古色を打ち込み
研ぎ出し等を繰り返し
仕上げていきます

13)
気になる色のムラ等は筆入れ等で仕上げていきます


毛稙(髪結)

準備
馬の毛
髭用:適量を糸で束ねたもの
左右合計で20本(長さ25㎝~30㎝)
顎髭用:適量を糸で束ねたもの
13本(長さ約15㎝端が自然に細くなっているのが好ましい)
木工ボンド・錐・元結(約65㎝1本)
クリップ・爪楊枝(適量)

1)
彫の時、開けておいた錐穴に再度、
錐を通し直します
この時、錐を円錐状に回し毛を差し込む入り口を広げます

2)
爪楊枝の先端を四角推状に削り
軽く木工ボンドをつけます

3)
毛穴に束ねた毛を差し込みその内側に四角推に削った爪楊枝を差し込みます
この時爪楊枝を左右に捩じるように回します
これにより束ねた毛が爪楊枝の周りに扇形に広がり固定します
差し込んだ爪楊枝の根元を切り取ります
以後繰り返し植えていきます

4)
元結65㎝を三等分に切

5)
三等分した3本の内2本を2等分して
計5本の元結を準備します

6)
植えた毛に古色液を塗り重ね肌の色と合わせます

7)
電気ゴテで髪を揃え少しウェーブをつけます

8)
髪の毛を束ねて捩じっていき、端を木工ボンドを塗り
固まるまでクリップ等で固定します
注)見栄え良く揃えてください

9)
頭部中央で捩じった髪の束を交差させて
頭部中央に開けてあった2カ所の穴に面裏より
元結(長い元結)を二重に通し
捩じった髪を固定します

10)
元結は、面裏で結び木工ボンドを軽く付け
弛み止めとします

11)
固定した中央より左右5~6㎝の極力、面端に近いところに
錐穴を開け2本の髪の束を纏めて残りの元結で一縛りし
結び目の端を加工した爪楊枝に木工ボンドを付けて錐穴に
押し込め固定します(左右2カ所)

この時の爪楊枝先の加工形状は
二面カット(マイナスドライバー形状)で
元結の穴に押し込みやすい形状とします

12)
左右の残りの髪先を10本の植え込みの内側にはみ出さないよう、長さを切り揃え
正面から見えないよう、髪の端を残りの元結で縛り
11)の固定の仕方で髪の端を止めます
左右2カ所

商品コード品  名定価(税込)
57108堀安右衞門所蔵能面型紙 2集 石王尉13,750円
47422能面材4号 24×17×9cm 木曾桧材柾目材13,200円
75420木彫たたきのみ 平型 42mm12,100円
50057木彫用木槌 直径60mm2,200円
71240木彫たたきのみ 丸型 24mm5,170円
50002木彫鋸 先細 100mm1,705円
50448フィニッシングペーパー#120110円
49018ポリサイト黒 チューブ入り50g990円
49019ポリサイト 透 チューブ入り50g990円
49013工芸うるし・ポリサイト溶解液 約200ml770円
50092小皿(丸皿)3枚組 85mm陶器484円
49049まこも 粉末(こげ茶) 約50g2,090円
49023盛り上げ胡粉(下地用) 500g1,430円
49021三千本にかわ(和膠) 3本入り(約30g)220円
50097にかわ鍋 手付き9cm1,210円
50093乳鉢12cm (乳鉢2個・乳棒1本)2,420円
50087とうし#150 直径95mm(真鍮網)2,750円
50095重皿5枚2,310円
50115平筆(羊毛)木軸 5号 15mm440円
50232たたき筆小440円
50086しゃもじ (計量スプーン)297円
49022特上白玉胡粉(上塗り用) 500g6,050円
49223面打ち顔彩 8色セット2,035円
49101彩墨 6色セット2,420円
49028濃赤墨5,060円
55189彩墨面双硯1,100円
49024水乾板流し顔料13色セット(販売終了)6,820円
49046天然煤液チャン(古色液)10ml1,100円
49190螺青(ルイセイ)超微粉末(4面分)2,750円
50099竹ベラセット (5本組)165円
49026黒墨550円
50116面相筆 小550円
49111面打ち上塗り4点セット4,070円
50157馬の毛 尾っぽ アメ色 約160g束7,040円
50003四ツ目錐440円
50072ボンド 木工用 50g187円
50928元結 360×0.6mm 50本入り242円
令和5年2月現在